社外取締役という言葉を耳にする機会が増えてきている。まだまだ少ないながらも、中小企業においても社外取締役が果たす役割や設置の効果が注目されている。

■ 社外取締役とは?
社外取締役は、社内で利害関係がない外部の人材を取締役に加えことで、客観的な立場から経営状況の健全性を監視・監督する制度である。現在では、株主や取引先など企業に関わるすべてのステークホルダーの利益増大に向けて、透明で公正な意思決定を推進するために有効な制度と考えられている。
これに対して社内取締役は、会社内で昇進した社員が就任する場合の役職で、もともとは社員であるため会社とは利害関係があり経営陣とも緊密に関係している。また、社内取締役は社内業務の執行や経営判断に関与しているため、利害関係がない社外取締役はかなり重要な存在と言える。

2021年3月1日に施行された改正会社法により、上場会社では社外取締役設置が義務付けられ、選任義務に違反した場合には制裁金が科される。一方で、中小企業には社外取締役を設置する義務はなく、設置するかどうかはあくまでも各企業の自主的な判断による。とは言え、経営陣にはない幅広い知見や経験を吸収したり、持続的な成長に向けて経営の質を高めていくことを考えると、社外取締役の設置は有力な選択肢になりうる。

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■社外取締役が果たすべき役割・メリット
一般的には、経営に対する監督や助言、リスク管理の適正化、さらにステークホルダーとの橋渡しなどが役割として期待されている。とは言え、実際のところ社外取締役と設置している中小企業はかなり少数派である。しかしながら、オーナー経営の割合が高い中小企業においてこそ社外取締役を設置するメリットを活かしてくことが望まれる。

<社外取締役を設置するメリット>
・経営の透明性と客観性の向上:社外の第三者が関与することで客観的な視点が加わり、経営の透明性が高まる。

・外部の専門知識やネットワークの活用:社外取締役が持つ独自の専門知識や外部のネットワークを活用できる余地が広がる。

・コーポレートガバナンスの強化:オーナー社長に対するけん制機能が発揮され、健全なコーポレートガバナンスを実現できる。

・取引金融機関の信頼向上:経営の透明性や客観性が向上することにより、取引金融機関からの信頼度が向上し、さらに円滑な資金調達にもつながる。

・事業継続や後継者育成への貢献:豊富な経験や専門知識を通して事業継続や後継者育成への貢献が期待できる。

他方で、社外取締役を設置するデメリットも存在しており、コストである社外取締役に対する報酬の負担、適任者の選定の難しさ、社外取締役による過剰な関与が過剰のリスクなどは十分に考慮しておかなければならない。また社外取締役の要件は会社法でも定められており、誰でもOKということはない

■社外取締役の設置を成功させるには?
メリットがデメリットを上回る状況をつくり出すには、適切な人材を確保できるにかかっている。そうした中で大切にしたいのは、多様性とコミュニケーションである。
社長を含めた社内取締役のプロフィールを考慮しながら、不足している要素を社外から補完するという観点で多様性は大切にしたい。近年では、社外取締役に女性を積極的に迎え入れる傾向が強くなっているが、実現できれば理想的である。
また、社外取締役が持つ経験や知識を効果的に経営に活かしていくには、経営陣が社外取締役とのコミュニケーションを円滑に行うことも必要である。話す力とともに聴く力を備えた人材であることが望まれる。取締役会の枠に留まらず、必要に応じて現場の視察や実務担当者との意見交換などを交えながら、相互の理解を深めていくことが望まれますが、その際に聴く力が重要なスキルになる。

 

ツギノジダイに向けて小生が出稿した内容の一部を改編して掲載しています。