4月6日の日経新聞朝刊に「タマゴが映す安いニッポン」「不毛なチキンレースに」の見出し記事で、日本国内の過剰生産、過剰店舗の問題点が指摘されている。


タマゴは長年「物価の優等生」と言われているが、近年の飼料価格の上昇を考慮するといつまで「優等生」のままでいられるのか・・・・・と感じる。地球温暖化の影響とみられる天候不順の恒常化、世界の人口動向や穀物需要の予測を踏まえれば、ニワトリのエサである配合飼料の価格は今後さらに上昇すると予想するのがごく自然な考え方だろう。
にもかかわらず、これかも価格は上がらない、というよりも、上げられないままだろうと思われる。その背景には、過当競争をもらたす過剰店舗という構造的な問題がある。

■何をもって「負け組」なのか?
「過剰生産と過剰店舗を解消しないと物価は上がらないが、だれも手をつけようとしない。それをしたら負け組になる。」
あるスーパー首脳の本音が記事に掲載されている。
だが、そもそも「負け組」とは、どの尺度をもって「負け」と評しているのか、私にはよくわからない。市場における占有率なのか?それとも売上増加率(成長率)なのか?量販店という営業形態を考慮すれば、経営戦略の視点が「量」に傾斜し、「質」が軽視されていることは容易に想像できる。ただ、高齢化と人口減少が加速する中で、いつまで量的な拡大を志向するのだろうか。不毛な消耗戦から「名誉ある撤退」をし、他社とは異なる独自路線を進むことが生き残りの近道のはずだが、その経営の判断、決断を誰もしない。

■「成功体験」が経営戦略の本質から目を背けさせている?
今の流通業界の経営層は概ね50代後半~60代前半で、私よりも5~10歳ほど年長の世代が多いと推測できる。かつて高度成長のなごりの中で規模拡大を通して実績を残し、出世していった年代の人たちとも言えるが、過去の「成功体験」を否定して発想を転換することはやはり難しいのだろうと想像できる。バブル崩壊後に社会人になった我々以降の世代とは異なり、ある程度「良い思い」ができた最後の世代だ。
かつて、セブンイレブンの鈴木敏文さんが「成功体験を捨てろ!」と講演会で語っていたことを思い出すが、現状を考えると、名誉ある撤退は「良い思い」をしていないミレニアル世代まで待つことになるかもしれない。

■戦略の本質は同質競争の回避
店舗数の増加をともなう規模拡大は、必然的に事業内容を均一化させる。多数の店舗を多様な形態で運営することは、管理の煩雑化、さらにはコストの増加をもたらすからだ。業界内での新規出店による規模拡大競争は、結局のところ「似たような店」を大量生産し、「不毛なチキンレース」に帰結している。日経記事に書かれている通りだ。
それではどうするか?同質競争の回避には、「質の追求」しかない。「質」には物質的な面とともに情緒的な面もあるが、わかりやすい概念は「ブランド」だろう。自社の独自性をコンセプトとして整理し、ブランディングによって具現化するという、言われてみれば当たり前のプロセスが必要である。
人口が減少する日本国内では、規模拡大で成長するのはかなりムリがある。「ヨソがやっているかウチもやる」ではなく、「ヨソがやっていないからウチがやる」という発想が、やはり生き残り戦略の王道だ。