「コロナ危機」と言える社会経済状況において、まず企業が優先すべきことは「存続」であり、短期的にはいかに「カネ」(運転資金)の確保するかが最重要課題となる。すでにさまざまな金融支援策が動き出しており、持続化給付金の付与もはじまり、家賃の補助制度も今後創設されることになりそうだ。税金や社会保険料も当面納付猶予が認められることになっている。中小事業者の支援がこれで十分と言えるどうかは微妙だが、少なくとも手元に資金を残せる手段はそれなりに整いつつある。また、雇用調整助成金の申請要件や給付条件も非常時モードに移行し、申請手続きの煩雑さなどの問題の解消も期待して良いと思う。
感染拡大は最悪期を脱しつつあると思われるが、完全な終息は不透明だ。そんな中でも「コロナ危機」から「コロナ後」に向けた中長期的な展望を描く際に重要なのが「ヒト」である。

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■「ヒト」が企業存続の前提条件
内定取消し、雇止め、一方的な解雇などヒトに関わるトラブルがすでに発生してきている。12年前のリーマンショックの際にも、同じような状況が多発したが。残念ながらこうした事態は今後もなくならないだろう。「クビ切り」している企業がすべて「ブラック」とまでは言えないだろうが、冷静に考えれば「クビ切り」がかなり近視眼的な行為と気付くはずだ。「コロナ危機」が発生する前の労働市場がどうなっていたか・・・これを思い出せば、説明は不要だろう。目先のカネも大切ではあるが、ヒトが企業存続の前提条件であったことを忘れてはいけない。

■すでに起きているパラダイムシフト
「バブル」崩壊後、「失われた10年」その後「失われた20年」と言われたが、90年代後半の不況深化においては「デフレ」が深刻化した。いまから20年ほど前の1999年版「経済白書」では雇用・設備・債務の「3つの過剰」に分析されたが、日本国内でリストラ圧力が高まったことは周知のことである。コスト削減と効率化を大義として進行したリストラによる「ヒト減らし」により、労働力としてのヒトはしばらく供給過剰の状態となり、「いつでも安くを確保できる」環境が続いていた。

しかし、「団塊世代」の大量退職が始まった2012年が転換点になっている。(株)経営共創基盤の資料によれば、2012年以降労働市場のの需給関係は逆転に転じており、特に高齢化と人口減少が進む地方では需給がさらにひっ迫していると考えられる。従業員を解雇してもまた採用すればいいだろう・・・というはかなり楽観的な考えであり、カネの確保もさることながら、ヒトをどう守るのかを熟慮しなければ、「コロナ後」の企業存続は確実に困難に陥るだろう。

■「ヒト・ヒト・ヒト」の経営へのシフト
仮に経営状況が厳しくても、「ヒトを守る」ことを前提にまずは従業員と十分にコミュニケーションをとることが大切だ。休業にともなう給与の減額なども必要になる場合もあろうが、従業員と希望を共有することでなんとか乗り切るしかない。いまは「ヒト・ヒト・ヒト」の経営にシフトする転換点だ。