先月、長野県診断協会の視察旅行で飛騨高山を訪問した。
北アルプスの向こう側に位置する同市は、松本と同じ城下町で古くからの歴史を重ねている。周辺町村との合併により、面積は東京都とほぼ同じ広さで「日本一広大な市」でもある。

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観光は主要産業であり、2018年の日帰り・宿泊客は合計約440万人(高山市観光統計による)に達する。インバウンドにおいても地方都市の中でかなり大きな成果を上げており、昨年の外国人宿泊数は約55万人(前記統計による)となっている。実際に視察旅行で訪問した際にも多くの外国人旅行者が街を歩いているのを目にした。高山市の人口が現在約88,000人であることを考慮すると、かなりの人数だと言える。古い街並みが広範に残され、周囲には豊かな自然があふれ、お祭りなどの伝統文化、飛騨牛に代表される食、家具などの地場産業など観光に不可欠な地域資源は比較的豊富だと思われるものの、それにしても街のにぎわいは想像以上だった。市街地の各商店にも観光客が回遊しており、地方都市にありがちな「シャッター通り」は記憶に残らないほどなかった。

なぜか?
その背景を探求したくなった。

過日、タイミング良く高山市長の講演をお聴きする機会に恵まれ、短時間ではあったが直接お話しもさせていただいた。「なぜ?」に対する私なりの結論は以下の通りだ。
❶少子高齢化と人口減少に伴う「縮んでいく社会」に対する行政の危機意識が相対的に高い。
❷地域の特長を的確に把握し、自らの頭で考え、強みとして活かせている。
❸域外からの「外貨」を稼ぐという意識が強く、地域のブランド化に取り組み、さらに経済効果を地域に波及させる戦略をもち、かつ実行できている。
❹市職員の海外主要都市への派遣、多言語対応、市内での受入れインフラ整備など、インバウンドのインターフェイスを充実させている。
❺江戸時代には代官が定期的に交替する「天領」であったため、域外からの来訪者に対する受容力がDNAとして市民に根付いている。

❺は高山市特有の事情であるが、❶~❹はどの地域でも創意工夫することで取り組めるように思われる。
日本政府がインバウンドを経済成長戦略の重要施策に位置付けていることは、人口減少社会においてきわめて的確であり、来年の東京オリンピックが大きなチャンスであることは周知の通りだ。あとは各自治体、さらには各事業者が、その「追い風」に乗り、持続可能性を高めることができるかどうかだ。飛騨高山から学べることは多そうだ。