「死ぬまでやるしかない」・・・先月20日の日経新聞朝刊「迫る大廃業時代」の特集記事には、こんな深刻なサブタイトルが付されていた。

中小企業経営者の平均的な引退年齢は70歳だが、70歳超の245万人のうちほぼ半数が後継者未定の状況にある。事業承継の選択肢は、親族内承継or親族外承継であるが、日本人の「家」に対する意識が希薄化する中では、「家業を継ぐ」場面が減少するは必然である。とは言え私の経験では、事業承継を考える経営者の多くは本音では「息子(あるいは娘)に継いでほしい」という思いを持っているというのが実感だ。それゆえに、親族が後継者に決まっているというのは、その会社にとってきわめて幸運なことなのだ。
他方で、親族外承継もそう簡単な話ではない。信頼できる経営幹部であっても、会社を引き継ぐリスクまで背負える人材は稀少だ。また活発になりつつあるM&Aでも、一般的なM&Aコンサルティングの場合、着手金と成功報酬がかなりの金額になるため、依頼を躊躇する経営者が多い。

日経の記事を読む中で感じたことは、事業承継の着手が「後手」に回ることで選択肢が狭まり、最終的には「死ぬまでやる」という選択を迫られているということだ。日々目の前の仕事がある中で、会社さらには経営者自身の将来展望を描くのは簡単なことではないが、だからこそ「先手」を打って考えるか否かで大きな差が出る。会計事務所、取引金融機関、商工会・商工会議所など身近な支援機関にとにかく早く相談することがベターだ。そして我々中小企業診断士を含む支援者側も、経営者が勇気を持って相談してきてくれたことに真摯に対応しなければならない。

国の事業承継支援に関わる施策として、支援機関が相互連携した「事業承継診断」が今後展開される計画がある。この事業承継診断が経営者にとって「先手」を打つきっかけになって欲しいと思っている。