先月27日の日経朝刊に「『先入観の壁』を壊せるか」という見出しで、吉野家カフェの店舗実験に関する記事が掲載されていた。男性客の割合が約8割を占める吉野家では、女性客の吸引が課題となっていたが、カフェ方式のキャッシュ&キャリーの導入、メニューの刷新、テーブル席の増設を盛り込んだ新業態店では、女性比率が約3割に増加してひとまず成果が出ているそうだ。過度に女性客を重視する店づくりは、コアユーザーである“おじさん”たちの離反を招くリスクがあり、記事によれば二兎を追う戦略に試行錯誤を繰り返していたようだ。うまく落とし所を見せたことで、女性の消費習慣に変化をもたらし、「女性orおじさん」ではなく「女性andおじさん」も実現した。

「消費を促すには習慣や先入観、罪悪感など購入を妨げる壁を破壊することが必要だ」・・・と記事では指摘しているが、これは現代のマーケティングにおいてとても重要な観点だと感じた。
記事ではさらに、靴のネット通販での長めの返品期限、宅配便の「急ぎません。便」などの事例が紹介されていた。便利さの裏側で発生しているさまざまなムダやムリに知るほど、購買や利用を遠慮してしまう消費者心理が作用する。さらに日本人の国民性(良く言えば「美徳」)から罪悪感を抱く消費者も相応に存在するだろう。宅配ドライバーの過重な負担が問題になる中で、「急ぎません。便」は想定以上の利用率とのこと。なるほど・・・・・と感じた。

購買や利用で実施の行動に至るまでには、さまざまな心理が作用している。その心理のプロセスをていねいに読み解く努力を続けることで、消費者に納得感を醸成し、財布のひもを緩めてもらうチャンスは大きくなる。マーケティングの基本原則である「顧客を知る」がやはり大切だ。