大塚家具、ロッテ・・・しばらく前に、経営者一族による「お家騒動」があった企業である。同族経営者は、企業という枠を外せば、家族あるいは親族という関係になる。普段は仲が良い家族でも、夫婦喧嘩、親子喧嘩、兄弟喧嘩は“年中行事”みたいなものである。しかし、身内であるが故に、もめ事がこじれると面倒なことになりやすい。そして、それが企業という枠の中に持ち込まれた場合、弊害は大きい。社員の士気の減退、企業イメージの悪化、顧客や仕入先などの信用の低下など、さまざまな面で悪影響が生じ、結果的に業績の低迷に至る可能性もある。

こうした経営リスクは、ほとんどが同族経営である中小企業に常に存在している。私自身、サラリーマン時代を含めて、訪問先の打合せや会議において、兄弟喧嘩、親子喧嘩、夫婦喧嘩に何度か遭遇した。サラリーマンの時にはただ静観するしかなかったが、診断士という立場になってからは、ときには「説教」することもある。

この経営リスクは、多くの中小企業が経営課題として直面している事業承継においても当てはまる。例えば、後継者が社長の実子(特に息子)の場合、いつまでも「半人前扱い」で、経営者の座を譲らない、あるいは譲っても何かと口を差し挟む、そして結果的に親子仲が良くない・・・そんな場面をしばしば目にする。円滑に経営者交替が進まなければ、企業内の組織体制の世代交代も遅れ、さらに事業内容自体が陳腐化する可能性もある。

後継者の選定を経営者との「距離感」という観点で考えると、「娘婿」は最適だと個人的に感じている。元々実子ではないので、お互いにそれなりの気遣いもあり、微妙な距離感を保とうという意識も働きやすい。意見の対立も、感情的なもめ事には発展しにくいであろう。

もちろん、経営者の家族構成、実子の意向など個別の事情もあり、後継者を娘婿にできる場合は限られるであろうが、後継経営者の選考に際して、大いに検討に値する選択肢であることは間違いないであろう。