■「6次産業化」の条件は?

6次産業化は、「1次(農産物の生産)×2次(農産物の加工)×3次(商品であるモノ・サービスの販売)」の組合せ・融合による高付加価値追求型の経営戦略である。農業所得水準を引き上げるための選択肢の1つになり得る。

6次産業化の形態も多様であり、
・農産物の加工品を開発・製造し販売するパターン
・農産物を食材として調理し、「農家レストラン」として飲食サービスを提供するパターン
・自農場を観光農園として各種農業体験(作付・栽培・収穫)の場を提供するパターン
などがあり、それぞれを単独または複合で事業展開しており、多くの実例を見ることができる。

6次産業化は、事業形態の多角化であり、したがって相応のリスクを伴うため、取り組むにあたっては、いくつかの条件をクリアすることが求められる。その条件とは、
❶農場の将来ビジョンが明確であること
❷「マーケット・イン」の発想が事業を構想できること
❸組織の複雑化に対応できるマネジメント能力が持てること
❹企画開発能力、販売受注能力、販売先などの経営シーズを保持できること
である。もし不足しているのであれば、人材の採用、外部事業者との連携などにより、経営シーズを補充する方策も検討しなければならない。

 

■6次産業化以外の選択肢

事業の多角化ではなく、逆に栽培に集中する選択肢もある。栽培技術を高度化し、農産物の商品としての価値を高めて高価格商品まで進化させることも、1つの立派な戦略である。ある農場(農場主夫妻2名で営農)は、14aのハウスでミニトマトの水耕栽培を行い、年商20,000千円という高収益農業を実現している。難易度が高い栽培技術を創意工夫で確立し、さらに「商品」として徹底的に磨き上げた結果である。